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【掌編】齊藤想『旧聞紙』 [自作ショートショート]

本作は愛媛新聞主催の超ショートショート2022用に書いてボツにした作品です。
超ショートショートはテーマが5つあり、本作では「新聞」を選んでいます。
本作をボツにした理由については、こちらの無料ニュースレターで紹介します。次回は10/5発行です。



・基本的に月2回発行(5日、20日※こちらはバックナンバー)。
・新規登録の特典のアイデア発想のオリジナルシート(キーワード法、物語改造法)つき!

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『旧聞紙』 齊藤想

 速報性ではネットにかなわない。発信力ではテレビや動画に負ける。八方ふさがりで右肩下がりの新聞業界の救世主として「旧聞紙」が創刊された。
 主要顧客は若い時代を回顧したい高齢者。彼らが喜びそうな古い情報を、ひたすら流すのだ。旧聞紙を手にした高齢者は、涙を流して過ぎ去りし日々を回顧し、ときには若いころを思い出して元気を取り戻した。
 旧聞紙は思わぬヒットとなった。取材の必要がなく経費も掛からないので、収益はまたたくまに改善した。
 いつしか新聞紙は旧聞紙を作るためだけに発行されるようになった。配達どころか印刷されることもなく、読者の目にふれることもない。下らない記事でも古くなれば価値がでる。むしろ、古くなれば喜ばれそうな記事をのみを集めるようになった。業界は旧聞になるまで記事を蓄積することを「熟成」と呼んだ。
 時代とともに価値を失うじめな取材や社会派の記事は流行らなくなった。そのような記事は利益を生まないからだ。
 いつしか、世の中から新聞が消えた。

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