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【SS】齊藤想『ユニフォームを脱ぐ日』 [自作ショートショート]

第1回NIIKEI文学賞に応募した作品です。
テーマは「新潟」で、ブラックユーモアに挑戦してみました。
具体的な技法はこちらの無料ニュースレターで紹介します。次回は7/5発行です。



・基本的に月2回発行(5日、20日※こちらはバックナンバー)。
・新規登録の特典のアイデア発想のオリジナルシート(キーワード法、物語改造法)つき!

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 『ユニフォームを脱ぐ日』 齊藤 想

 慣れ親しんだオレンジのユニフォームを脱ぐ日がきた。いままでよく頑張ったと、感慨深いものがある。
 振り返ると、オレは失敗ばかりの人生だった。
 地元では有名な悪童で、警察には何度もお世話になった。酒、タバコ、かつあげはもちろんのこと、違法薬物にも手を出した。
 そんなオレを変えたのは、サッカーだった。
 ボールを夢中で追うことで、全てを忘れることができた。サッカーのためなら何でもできた。頭を下げたことのないオレが、サッカーのために頭を下げ、コーチに教えを請うた。
 オレはチームに入り、またたくまにエースに成長した。オレがゴールを決めるたびに、グラウンドだけでなく観客席も同じオレンジ色に揺れる。この一体感が魅力で、オレはチームの虜になっていった。
 このオレンジのユニフォームには不思議な力がある。オレンジは全てをひとつにまとめるシンボルなのだ。
 しかし、この場所に永遠にいられるわけではない。このオレにも、ついにオレンジのユニフォームを脱ぐ日が来た。
 門を出るオレに、長年指導してくれたコーチは声を掛けてくれた。
「もう二度と戻ってくるなよ」
 オレは背中越しに片手を軽く上げると、いままでいた施設を仰ぎ見た。
 この偉容を誇る、アメリカの重犯罪専門の刑務所を。

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