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【書評】阿津川辰海『透明人間は密室に潜む』 [書評]

表題作の透明人間が登場するミステリをはじめとして、奇作が満載です。


透明人間は密室に潜む (光文社文庫)

透明人間は密室に潜む (光文社文庫)

  • 作者: 阿津川 辰海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2022/09/13
  • メディア: Kindle版



収録作は4つです。
『透明人間は密室に潜む』は透明人間になる病気が流行している世界が舞台です。
前半は倒叙形式で透明人間が殺人を犯すまでを描き、後半は透明人間が犯行現場に閉じ込められ、その透明人間の隠れ場所を発見するまでを描きます。
よくこんな設定が思いつくなあと、感心することしかりです。
『六人の熱狂する日本人』はバカミスに近いです。
陪審員として集まったのが、たまたま事件に関係するアイドルオタクの集団で、オタク同士がオタクだからこそわかる推理を繰り広げ、話はあらぬ方向に進んでいきます。
筒井康隆風味で、ユーモア満載で笑えること必至です。
『盗聴された殺人』は聴力が優れている主人公と、推理役の探偵とのコンビです。
『第13号船室からの脱出』は本格ミステリで、豪華客船で行われる推理ツアーに参加した主人公が、人違いで誘拐されて密室に閉じ込められる話です。
推理ツアーの中身も面白ければ、その解答がラストで逆転する仕掛けも面白い。そこからさらに逆転を用意するサービス精神もすごい。
様々なアイデアをひとつの中編に盛り込んでしまう、作者の力量に感動です。
バラエティに富んだ4作ですが、いずれもアイデアが光り、他の作品も読みたいと思わせる作品集だと思います。

アイデア満載のミステリ中編集を読みたいひとのために!
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