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【書評】林智裕『「正しさ」の商人~情報災害を広める風評加害者はだれか』 [書評]

「情報災害」とともに「風評加害者」を正面から問いかける本です。


「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か

「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か

  • 作者: 林智裕
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2022/03/18
  • メディア: Kindle版



「情報災害」とは、誤った情報により被害が拡大してしまう現象をいいます。
本書は大震災における原発事故をメインにしていますが、様々な国際機関が調査したところ、被ばくを原因とする死者はいませんが、避難生活によるストレス等で1300人以上の方が亡くなっています。
実はチェルノブイリ事故でも、被ばくによる犠牲より避難生活によるストレスの方が人的被害大きいことは示されていましたが、周知されることなく、同じ被害を繰り返してしまいました。
いくら正しい情報を発信しても、大量のデマ情報があると埋もれてしまい、認知バイアスもあってなかなか正しい情報は届きません。
「嘘も100回言えば真実になる」という言葉がありますが、認知バイアス的に繰り返し言われると人間はウソも信じてしまうのです。
風評被害とはよく聞きますが、被害者がいるということは加害者がいるはずです。
主たる加害者はマスコミであり、発信力の強い著名人ですが、彼らは加害者という実感に乏しく、いまだに被害者を量産し続けています。
著者は正しい情報を発信するだけでなく、デマ情報には積極的に反論する重要性を論じます。
情報災害を放置することでさらに情報災害が増えていく。
そして科学的に反する主張に、行政が屈服する姿を提示します。
結果として、いつまでたっても、科学に基づかない主張が、大きな顔をしてはびこることになります。

なんとか対策をと思いたくなりますが、これは非常に難しい問題をはらみます。
言論の自由の問題もあるし、科学的正確性も新発見により結論が180度変わることもあります。
現実問題として規制は難しいので、やはり地元や公的機関が、積極的に反論して公表する姿勢が大事なのかなと思います。
風評被害を防止するには何が効果的なのか、研究が待たれます。

「情報災害」と「風評被害」を考えたいひとのために!
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