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【書評】豊田有恒『モンゴルの残光』 [書評]

SF第一世代、豊田有恒の第一長編です。


モンゴルの残光 (講談社文庫)

モンゴルの残光 (講談社文庫)

  • 作者: 豊田有恒
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/07/03
  • メディア: Kindle版



モンゴル帝国が世界を制覇し、白人が虐げられる世界。
主人公はタイムマシンを使って元代に戻り、白人を救うために歴史を改変しようとします。
構造としては、井上靖『敦煌』を髣髴とさせます。
最初は敵意を持ってモンゴル帝国に潜入するものの、そのモンゴル帝国で認められ、皇太子たちの人柄に引かれ、いつしか完全にモンゴル人として行動するようになります。
主人公はモンゴル人に惹かれる自分と、、未来の仲間を救いたいという二つの感情に引き裂かれそうになります。欧州を制覇することになる皇太子たちを害することなく、歴史を変えようとしますが、結果として何気ない一言が原因で歴史が大きく変わることになります。
SFですが、物語は実際の歴史をなぞります。
登場人物たちは思い切ったディフォルメがされており、善悪がはっきりしすぎているかもしれません。
ですが、エンターテイメント小説として楽しく読むことができました。
ラストの戦闘シーンは歴史に大きな影響を及ぼすものではありませんが、このシーンを持ってきたところに、歴史に対する作者の気持ちが詰まっているような気がします。

モンゴル帝国の数代に渡る壮大な歴史ドラマを堪能したいひとのために!
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