『原稿用紙5枚以内ならなんでもOK』大会の見本 [企画]
本やらアマゾンギフト券やら賞品付きの『原稿用紙5枚以内ならなんでもOK』大会の見本です。
月頭に自作ショートショートをUPすると宣言していますが、その換わりということで。
ちなみにメルマガからの抜粋ですので、すでにお読みの方はご容赦ください。
<↓大会の詳しい内容についてはこちら↓>
http://takeaction.blog.so-net.ne.jp/2015-02-07-1
今回は企画にあわせまして、こんな作品でもOKという例を出したいと思います。
その1は単なる描写で、その2はあらすじです。
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<その1>
『墓石』 齊藤想 (※描写です)
人生の終着点が、こんな四角い石だとは悲しすぎる。
そう思いながら柄杓で水を掬い、主人である明仁の名前が刻まれた墓石に何度もふりかけた。スポンジで表面についた埃を丁寧に落としていると、まるでこの墓石があの人の背中にように見えてきた。
墓石など、ただの石だと知っているはずなのに。
私は小さな花束を墓石の手前に置いて、線香に火をつけた。緩やかな煙が立ち上り、周囲から新緑の匂いを押しのけていく。
「ご主人が亡くなられてもう一年が経つとは信じられませんね」
一緒にきてくれた恭子が、懐かしそうな目をした。
私と主人とは職場結婚だった。恭子は同じ職場の先輩であり、亡き主人にとっては同期にあたる。二人は同じ部署だったこともあり、よきライバルであり、よき相談相手だったようだ。
結婚する前は、討論する二人の姿を羨ましく眺めたものだ。
「ご主人が不慮の事故で亡くなられてから、職場は火の消えたろうそくになってしまいました。雰囲気だけでなく営業成績面でも下がる一方なのよ。若くてもご主人の実力は誰もが認めるところでしたから、本当に惜しい人を亡くしました」
私は小さく頷くしかなかった。地味な総務課だった私と、花形営業である恭子とは仕事上の接点はまったくと言っていいほど無かった。恭子は私にではなく、墓石に向かって語りかけているようだった。
「それにしても新婚早々にあの世に行ってしまうなんて信じられないわ。新人研修のころからあの人はあわてん坊だったけど、最後までそそっかしいなんて困ったものね。この職場にいる限り死ぬまで休めないと言ってたけど、だからといって本当に死ぬこと無いじゃないねえ」
恭子の目に涙が浮かんでいた。眩暈がしたのか少し足元がおぼつかなくなり、何か支えを求めるかのように墓石に手を添えた。そしてそのまま崩れ落ちた。
「明仁さん……」
まるで昔の恋人に囁きかけるようだった。恭子は、いつの間にか、主人のことを名前で呼び始めていた。私が明仁に結婚を迫ったとき、明仁が一瞬困った顔をしたことを思い出した。
恭子は周囲を憚らずに泣き続けた。もう遠慮する必要は無いと思ったのだろうか。それとも私の姿が見えなくなったのだろうか。
緑豊かな公園墓地に、カラスの鳴き声が響き渡った。私はこの場から黙って立ち去るべきなのだろうか。二人だけの世界に浸らせてあげるべきなのだろうか。
全ては終わってしまったことなのだから。
<その2>
『半人間』 齊藤想 (※あらすじです)
人間として何かが不足していると、半人間として、工場での単純作業を義務付けられる社会。主人公も人間として何かが足りないため、半人間として工場に放り込まれている。
この工場には、何かが足りない人間が集まっている。それは生まれつきだったり、後天的だったり、または意図的に作られた半人間だったりする。
ある日、主人公の職場に片手しかない半人間が配属される。仕事は検品だ。これを1日12時間こなす。人間は低いエネルギーで効率よく働いてくれる。
彼は、本来は返品すべき異常品をくすねて、義手を作ろうとしている。主人公は何も感じないが、熱意にほだされて協力するようになる。主人公が足りないのは目標だということに気がつく。
義手が完成に近づいたとき、看守に見つかり取り上げられる。ところが、彼も半人間予備軍だった。かれが不足しているのは優しさだった。半人間と接していくうちに、看守も優しさを回復して転落を免れる。
最後に半人間から回復した仲間たちで、工場の脱出を試みる。
この戦いを通じて、半人間たちは人間の地位を取り戻す。
(おわり)
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(プチ解説)
その1、その2も練習で書いたものです。
その1は「小説筋トレ」と称して仲間内でひたすら描写の練習をしたのですが、そのときの作品のひとつです。このときのテーマは忘れました。
その2は「好きな小説の構成を利用して、新しいあらすじを書く」という練習をひとりでしていたときに書いたものです。
ちなみに元作品は『うそつき大ちゃん』です。このあらすじには元作品のかけらもありませんが、当時のメモを見返すと、特徴的な構成だけはそのまま活用したようです。
このように『原稿用紙5枚以内ならなんでもOK』大会はなんでもありです。
みなさんふるってご応募ください!
月頭に自作ショートショートをUPすると宣言していますが、その換わりということで。
ちなみにメルマガからの抜粋ですので、すでにお読みの方はご容赦ください。
<↓大会の詳しい内容についてはこちら↓>
http://takeaction.blog.so-net.ne.jp/2015-02-07-1
今回は企画にあわせまして、こんな作品でもOKという例を出したいと思います。
その1は単なる描写で、その2はあらすじです。
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<その1>
『墓石』 齊藤想 (※描写です)
人生の終着点が、こんな四角い石だとは悲しすぎる。
そう思いながら柄杓で水を掬い、主人である明仁の名前が刻まれた墓石に何度もふりかけた。スポンジで表面についた埃を丁寧に落としていると、まるでこの墓石があの人の背中にように見えてきた。
墓石など、ただの石だと知っているはずなのに。
私は小さな花束を墓石の手前に置いて、線香に火をつけた。緩やかな煙が立ち上り、周囲から新緑の匂いを押しのけていく。
「ご主人が亡くなられてもう一年が経つとは信じられませんね」
一緒にきてくれた恭子が、懐かしそうな目をした。
私と主人とは職場結婚だった。恭子は同じ職場の先輩であり、亡き主人にとっては同期にあたる。二人は同じ部署だったこともあり、よきライバルであり、よき相談相手だったようだ。
結婚する前は、討論する二人の姿を羨ましく眺めたものだ。
「ご主人が不慮の事故で亡くなられてから、職場は火の消えたろうそくになってしまいました。雰囲気だけでなく営業成績面でも下がる一方なのよ。若くてもご主人の実力は誰もが認めるところでしたから、本当に惜しい人を亡くしました」
私は小さく頷くしかなかった。地味な総務課だった私と、花形営業である恭子とは仕事上の接点はまったくと言っていいほど無かった。恭子は私にではなく、墓石に向かって語りかけているようだった。
「それにしても新婚早々にあの世に行ってしまうなんて信じられないわ。新人研修のころからあの人はあわてん坊だったけど、最後までそそっかしいなんて困ったものね。この職場にいる限り死ぬまで休めないと言ってたけど、だからといって本当に死ぬこと無いじゃないねえ」
恭子の目に涙が浮かんでいた。眩暈がしたのか少し足元がおぼつかなくなり、何か支えを求めるかのように墓石に手を添えた。そしてそのまま崩れ落ちた。
「明仁さん……」
まるで昔の恋人に囁きかけるようだった。恭子は、いつの間にか、主人のことを名前で呼び始めていた。私が明仁に結婚を迫ったとき、明仁が一瞬困った顔をしたことを思い出した。
恭子は周囲を憚らずに泣き続けた。もう遠慮する必要は無いと思ったのだろうか。それとも私の姿が見えなくなったのだろうか。
緑豊かな公園墓地に、カラスの鳴き声が響き渡った。私はこの場から黙って立ち去るべきなのだろうか。二人だけの世界に浸らせてあげるべきなのだろうか。
全ては終わってしまったことなのだから。
<その2>
『半人間』 齊藤想 (※あらすじです)
人間として何かが不足していると、半人間として、工場での単純作業を義務付けられる社会。主人公も人間として何かが足りないため、半人間として工場に放り込まれている。
この工場には、何かが足りない人間が集まっている。それは生まれつきだったり、後天的だったり、または意図的に作られた半人間だったりする。
ある日、主人公の職場に片手しかない半人間が配属される。仕事は検品だ。これを1日12時間こなす。人間は低いエネルギーで効率よく働いてくれる。
彼は、本来は返品すべき異常品をくすねて、義手を作ろうとしている。主人公は何も感じないが、熱意にほだされて協力するようになる。主人公が足りないのは目標だということに気がつく。
義手が完成に近づいたとき、看守に見つかり取り上げられる。ところが、彼も半人間予備軍だった。かれが不足しているのは優しさだった。半人間と接していくうちに、看守も優しさを回復して転落を免れる。
最後に半人間から回復した仲間たちで、工場の脱出を試みる。
この戦いを通じて、半人間たちは人間の地位を取り戻す。
(おわり)
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(プチ解説)
その1、その2も練習で書いたものです。
その1は「小説筋トレ」と称して仲間内でひたすら描写の練習をしたのですが、そのときの作品のひとつです。このときのテーマは忘れました。
その2は「好きな小説の構成を利用して、新しいあらすじを書く」という練習をひとりでしていたときに書いたものです。
ちなみに元作品は『うそつき大ちゃん』です。このあらすじには元作品のかけらもありませんが、当時のメモを見返すと、特徴的な構成だけはそのまま活用したようです。
このように『原稿用紙5枚以内ならなんでもOK』大会はなんでもありです。
みなさんふるってご応募ください!
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