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第2回電王戦の記事が日経ビジネスに掲載されています。 [将棋]

かなりの長文ですが、それだけに読み応えがあります。
将棋界の未来について、いろいろ考えさせられました。

【賢者の知恵】「人間対コンピュータ将棋」頂上決戦の真実
〔前編〕対局3日前、「棋界の武蔵」三浦八段が洩らした本音
 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35787
〔後編〕一手も悪手を指さなかった三浦八段はなぜ破れたのか
 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35787


記事によると、対局3日間に、三浦八段はこう語ったそうです。

「いま、(GPS側から)貸し出されたソフトと練習で指しているんですが、コンピュータが苦手とされる序盤戦でも、GPSはスキがないんです。そして、こちらが少しでも不利になったら、そのまま終わりです。
ほかのソフトよりも、明らかに頭抜けています。強いとは聞いていましたが、これほど強いとは・・・。実は、タイトルも狙えるある若手有望棋士が、GPSに18連敗しているんです」

いろいろと意見はあると思いますが、コンピュータ将棋のTOPレベルは、すでに一般的なプロ棋士を超えていることは間違いないと思います。
これは昨年、米長永世棋聖が対戦した時点から、そうでした。プロがソフトにポロポロ負けていくことを、ブログで明かしていました。
そういう意味で、電王戦で唯一の人間側白星を挙げた阿部光瑠四段の話が、ぼくの胸にはストンと落ちます。


「そもそも僕は、コンピュータとの勝負は人間どうしの将棋とは違う、別のゲームだと考えています。ですから、『将棋のプロなのだから将棋で勝たなくては』とは思っていなかったです。『ルールにさえ違反しなければいい』と思っていました。
コンピュータが人間を超えるのは『時間の問題』です。もう、コンピュータとまともに戦うことにこだわっている時代ではないと思います」
(記者)しかし、プロとしては相手の癖など関係なく、将棋で勝つべきではないでしょうか?
「人間どうしの勝負だったら、そのとおりです。でもコンピュータとの勝負は、異質なものとして分けて考えるべきです。人間どうしの勝負と同じ考え方で勝てるほど、甘くはないんです」


プロ棋士とは、人間と指すプロです。対コンピュータとなると、ソフトの癖を解析し、バグを探すような作業になるので、対人間とは別の才能が必要となります。
なにしろコンピュータはあらゆる手を読み、しかもGPS将棋だと20手以上掘り下げます。人間も深く読めば20手以上読むことができますが、人間は直感でありそうもない手を恒捕手から消すことで読みを深めます。ところが、記事でもあるように、将棋とは人間の直感に反する手が正解手という場合もありうるのです。
いまの将棋ソフトは、形勢判断がかなり人間の感覚に近づいています。
ボナンザが登場するまでは、読みが深くても形勢判断がいまひとつだったので、人間の感覚では首を捻る手をコンピュータ側は最善手と判断することがあり、それが人間側優位の理由だったわけですが、いまやそのアドバンテージもかなりなくなってきました。むしろ電王戦を見ていると、人間の感覚よりコンピュータの数値がより正確ではないかと思う局面も見られました。
そうなると、読みで劣る人間が勝つのはそうとう厳しいというのが実感です。

三浦八段は、電王戦後にこう語ったそうです。


「太平洋戦争について、『なぜ日本軍はあんな無謀な戦いをしたのか』とよくいわれるじゃないですか。でも、本当はあのとき日本軍にも、冷静にアメリカの強さを計算できた人はいたと思うんです。お互いの国力を比較して、もし最悪の予想が的中した場合は、勝ち目はないと。
それでも開戦に踏み切れたのは、まさか相手がそこまで強いとは思わなかったからなのでしょう。ところが、いざ戦ってみたら、そのまさかだった。そういうことだったのだろうと思うんです。今回の勝負で私は、そういうことは実際に起こりえるのだと学びました」


電王戦の功罪について、いろいろなところで語られていますが、ぼくが思うに、いつかはやらなくてはならないことだったと思います。そして、人間側が1勝でもできるこのタイミングで実施できたのは良かったと思っています。
今後はいかにして人間がコンピュータに勝つのか、という方向にシフトしないと現実と理想のギャップが広がりすぎて、苦しくなるのではないかと感じています。

ぼくが気になっているのは、電王戦をどう将棋界の発展に結びつけていくのかというビジョンが見えてこないことです。
将棋のイベントとして、5日間で計190万人の視聴数を集めるというのはものすごいことです。
木村八段の解説といい、安食女流初段のおとぼけといい、将棋棋士の顔やキャラを広く売り出すことができましたが、さて、これをどう次に繋げていけばいいのだろうかと。

ある将棋大会で子供に指導をされている老人が「みんな中学生になると止めちゃうんだよね」といわれていました。つまり、将棋をしっているけど、しばらく指していない潜在人口はかなりあると想像しています。
せっかくこう、ニコ動画で将棋の楽しさをアピールできたのだから、気軽に参加できる将棋大会が増えれば、もっと「ちょっと大会出てみるか」とか「久しぶりに将棋をしてみるか」という気持になって、みんなより将棋に親しめるのではないかと思っています。
子供の大会はクラス別ですが、大人にもクラス別大会を作るのはどうでしょう。将棋クラブ24が人気ですが、やっぱり、どこかで自分の実力を試したいと思っているとアマチュアは多いと思います。
対面で指すと、また違いますからね。
その大会に、電王戦とかで顔の知られた棋士がでてきてくれると、わーっと盛り上がるのではないかと。

ずいぶんとダラダラと書いてしまいましたが、ぜひとも日経ビジネスの記事を読んでください。
素直で、とても興味深い記事だと思います。
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コメント 3

自称隊長

もうそんな時代なんですか。なんかすごいなあ。先見の明ですねぇ。三浦八段のコメント。
by 自称隊長 (2013-05-17 06:43) 

Tome館長

将棋の記事、毎回楽しみです。
私はゲームやりませんが、囲碁と将棋は別。

URLの将棋ソフト「将皇 Ver 2.41」に平手で5連敗中。
以前は駒落ちでも勝てたのに・・・・・・

囲碁ソフト「COSUMI」も、9路盤では負け越してます。
ソフトは多くの優秀な人知の集積ですから、やがて個人の知が敵わなくなるのは、必然でしょうね。
by Tome館長 (2013-05-17 11:13) 

サイトー

>自称隊長さん
将棋は、人間TOPを超えたかどうかは微妙ですが、現時点においてプロの平均水準を凌駕しています。
三浦八段のコメントは、対戦したからこそ言えるコメントですね。
あのときのように。

>Tome館長
COSUMIで対戦してみましたが、9路盤レベル1で完敗しました。
いやー、まいった。負け越しでもいい勝負ができるのですから、ぼくより上手ですね。
もうちょっと練習しないと(汗)
将皇はぼくのパソコンだとLv1までしか対戦できない(Lv2以上はエラーが出る)のですが、まあ勝てるという感じです。
そんなに余裕はありませんが(笑)

囲碁ソフトもいま技術的ブレイクスルーがおきましたから、ここ2~3年でどこまで伸びるかでしょうね。
by サイトー (2013-05-18 21:37) 

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