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第2回電王戦第5局(三浦八段VSGPS将棋) [将棋]

【第2回電王戦】
http://ex.nicovideo.jp/denousen2013/index.html


衝撃的な結果でした。

いままでの4局におけるコンピューター側の強さを見てきて、三浦八段が勝つと予想していたひとは少なかったと思います。
電王戦に先駆けて行われたGPSVSアマの対局では、スペックが限られるノートパソコンにもかかわらず、圧倒的な力で強豪たちをなぎ倒していました。
プロですら、不特定多数のアマ強豪と対戦するとだいたい勝率8~9割なのに、GPSは97%超というありない勝率をたたき出しました。
しかも、今回は600台以上のコンピュータをつなげた大規模クラスタです。
それでも、三浦八段なら、何らかの対策を用意して、一方的にならないと信じていました。
コンピューターは幅広く読みますので、一直線の狭い展開になれば、人間が読み勝つ可能性があります。
三浦八段はプロの中でもこの狭い読みが強く、その展開になれば人間のよさが生きるのではないかと。
そして、人間側が先手ですし、三浦八段の序盤力があれば、望みの展開にまで持ち込めるのではないかと。
そう思っていました。

ということで将棋ですが、矢倉から三浦八段得意の角が向き合う脇システムになりました。
脇システムは終盤まで研究が進んでいるので、人間が時間を節約するのはとっておきの作戦です。新手がでるまで、すっとばそうと思えば、飛ばせます。
しかし、三浦八段は手損を覚悟で角をすっと引きます。
このあたりは趣味の問題らしいですが、GPSに攻めさせて受けつぶしを狙ったのかもしれません。
それからGPSが細い攻めを続け、三浦八段が受け切れるかどうかの勝負になりますが、GPSが人間にはさせない手をどんどん出します。
まず56手目の8五金。
中段で金を手放すのはなかなか考えにくいですが、これが手厚い好手でした。
そこから再び金交換して77手目の8二歩で後手が困ったように見えますが、GPSの6二金から8二歩が攻めをつなげるさらなる好手で、これで先手が困りました。
歩があれば先手優勢ですが、歩がないために上手い受けがありません。
どこからここまで読んでいたのでしょうか。
今回のGPSは20~24手読むらしいです。
8二歩の20手前である60手目でこの局面を想定していたとしらら、まさに人外の強さです。
この手順を見ていると、幅広い局面ではもはや人間の領域を超えていると思われます。
三浦八段の敗因を探るとすると、局面を広くした39手目6八角まで遡るかもしれません。

三浦八段にこれとった悪手はなかったように思いますが、結果からみると、手裏剣8八歩が厳しすぎました。
今後は、人間がいかにしてコンピューターに勝つのかという段階にきたのかなと思います。

ぼくは思うのですが、いまのプロ棋士は、将棋の専門家ではありますが、対人間戦の専門家でもあります。
大山康晴十五世名人の強さは、相手の性格・実力を見切って、タイトル戦でも「相手はこの定跡を知らない」「相手はきっとミスする」と判断すると、正確に対応させると自分が不利になる手順を何食わぬ顔で突き進んでいきます。
これが強さの秘訣でしたが、コンピューターにこの手は通用しません。
同じ将棋でも、まったく別の発想が必要となります。
対コンピューター戦を考えると、プロ棋士だけでなく、対コンピュータに特化したアマチュアとペアを組むという作戦はあるかもしれません。
600台のクラスタと対戦するには、人間側も10人20人いてもいいのではないかと。そう思います。

第3回電王戦はあるのでしょうか。
三浦八段が対人間の対局ではまったく見られないほど一方的に完敗した衝撃は大きく、そう簡単には決められないと思います。
もう人間側は渡辺竜王を出すしかありませんが、うーん、どうなのでしょう。
もし続けるとしても、別コンセプトを考える時期なのかもしれません。
5月にはコンピューター将棋大会が開催されます。
電王戦の結果から、こちらもいっきに注目度が上がったと思います。

今回登場された5人の棋士たちは、本当にお疲れ様ですし、勇気ある登場に心から拍手を送りたいと思います。
コンピューターもプロと対戦することで、将棋の進歩に新しい一ページを広げたと思います。
特に第5局ででてきたコンピュータの仕掛けは、定跡になる可能性があります。
この素晴らしい大会を開催された関係者の皆様は本当にお疲れ様でした。


先手:三浦弘行八段
後手:GPS将棋

GPSの読み筋が公開されています。ご参考までに。
http://www.tanaka.ecc.u-tokyo.ac.jp/~ktanaka/denou2/
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