SSブログ

【書評】大崎善生『将棋の子』 [書評]

将棋のプロ棋士を目指すには、奨励会に入会し、厳しい対局を続けながら年齢制限まで四段にならないといけません。地元では天才の名を欲しいままにした少年たちの多くは、四段になれぬまま、奨励会を去っていきます。
奨励会を去った瞬間に、年齢も段も関係なく、いままでの年数を捨てての人生のやり直しが待っています。
オールオアナッシングの厳しい世界です。
本作は、夢破れた奨励会会員たちの苦悩や悲痛な叫び、そして挫折から立ち上がる青年たちを描いたすばらしい作品です。
物語は、成田英二氏に著者が11年ぶりに会いにいくところから始まります。
成田氏は紆余曲折の人生を歩みます。
天才の名をほしいままにした少年時代。
上京し、母と二人三脚でがんばってきた奨励会時代。そして、退会と両親の死。仕事に恵まれず、借金を重ね、どん底にあえぐ極貧生活。そこからの復活。
苦しい生活を続けているなかでも、成田氏は将棋の駒を持ち続けていました。将棋によって幾多の苦しみを味わってきたはずなのに、着の身着のままで夜逃げしたこともあるのに、それでも最後まで将棋の駒を持ち続けていました。
夢破れたとはいえ、将棋が心の支えだったのです。

将棋ファンだけでなく、何か夢を持ち続けているひとにも、ぜひ読んでほしいと思います。
内容を紹介したように、夢を叶えてハッピーエンドになる話ではありません。登場するのは、苦労し、挫折し、夢を持ったばかりに余計に苦悩する人間ばかりです。
だからこそ、この本で勇気を得られるひとが多いと思います。
僕的に、ものすごくオススメしたい本です。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0