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【書評】僕は人生を巻き戻す [書評]

重度の強迫神経症に陥ったエドが、良い医者とであい、そして自らの力で強迫神経症をコントロールできるようになり、最愛の妻と子供を得られるようになるまでの半生記です。


僕は人生を巻き戻す

僕は人生を巻き戻す

  • 作者: テリー マーフィー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/08/27
  • メディア: 単行本



強迫神経症は恐ろしい病気です。
本人は無意味な行動だと理解しているのに、内部から湧き出てくる不安の為に、儀式を行わざるを得なくなる。
その儀式が極端なために、日常生活が営めなくなってしまうのです。

エドの場合は、「時間が進むことによる死」を恐れました。
発症のきっかけは、母の死と、そのときに父に激しい暴力を振るわれたことです。
もちろんこのような出来事を経験したひと全員が強迫神経症になるわけでなく、性格的等さまざまな因子があってのことです。
エドは「時間を止める」ために、何か行動を起すと、必ず巻き戻しが必要となりました。
例えば前に三歩歩くと、その時間を無かったことにするために、テープを巻き戻すように正確に後ろ向きに三歩戻らないといけません。
戻り方が正確でないと感じると、本人が大丈夫だと思うまでやり直します。

エドはマイケルというアメリカを代表する精神科医と出会います。
彼もエドをなんとかしたいと思い、信頼関係を築くことに成功しますが、この名医を持ってしてもエドを治療することはできませんでした。
無力さに打ちひしがれたマイケルは、エドの前で号泣しました。
この涙がエドの心を変えます。
治療を通じて強迫神経症の知識を得たエドは、自らの手で治療プログラムを立てます。そして行動に移ります。
成功、失敗もありますが、少しずつ改善していきます。
自分のために泣いてくれた名医マイケルを驚かせたい。この一心で努力を続けます。
そして、エドは苦難を乗り越えました。
強迫神経症は完治するものでなく、いまも心の病と闘っています。
けど、暴れ馬をなだめすかせ、なんとか日常生活を送れるまで回復したのです。
病気について理解し、夫を支えてくれる良き伴侶も得ました。家族も増えました。

見ず知らずの人が、みんなエドを助けてくれます。この本には、アメリカ的優しさが溢れています。
強迫神経症を知るだけでなく、勇気と努力への希望を見せてくれる、とてもいい本だと思います。
映画化できるほどの感動作だと思います。
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